| お祝い | わかぎえふ |
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| カルテ3 精露路 | 詩森ろば |
| 深海家族 | きたむら和恵 |
| カンガルーと稲妻 | 山田裕幸 |
| 虹の羽衣橋 | 杉山雅子 |
| 眠り男とお天気予報 | 英国屋月子 |
| Hip Hop Typhoon −少女には死にたがるクセがある | 小里清 |
| 丘の上のハムレットのバカ | 佐分克敏 |
| ほどける双子 | 大岩真理 |
| 精肉工場のミスター・ケチャップ | 佃典彦 |
| 春夏秋冬 | 高井浩子 |
| ヨイマチノウタ | 寺田江里子 |
| 白いよ。 | 木元麻由 |
| 桜桃ごっこ | 芳崎洋子 |
| つぶならべ | 樋口美友喜 |
| 生まれ出づる前の悩み | 大内卓 |
| 約束 | 武田操美 |
| 那由多幻想 | 蟻蛸蛆 |
| letters | 田辺剛 |
| Hip Hop Typhoon −少女には死にたがるクセがある | 小里清 |
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| 丘の上のハムレットのバカ | 佐分克敏 |
| ほどける双子 | 大岩真理 |
| 精肉工場のミスター・ケチャップ | 佃典彦 |
| 桜桃ごっこ | 芳崎洋子 |
| letters | 田辺剛 |
| Hip Hop Typhoon −少女には死にたがるクセがある | 小里清 |
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| ほどける双子 | 大岩真理 |
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| 最終選考会は、2000年12月17日、紀伊國屋ホール(東京都新宿区)において公開で行われた。 審査員は、別役実、鴻上尚史、小松幹生、斎藤憐、清水邦夫、永井愛、横内謙介。 受賞作と最終候補作をすべて掲載した「優秀新人戯曲集2001」は、 ブロンズ新社から発売中(本体1,600円+消費税)。 ISBN4-89309-216-2 C0074 |
| 総評・選考経過 松田正隆 今回最終候補作となったのは、応募総数一九三本の戯曲のうち、第一次審査、第二次審査を経た六作品であった。公開審査会は12月17日、地人会公演中の紀伊國屋ホールで開かれた。審査員は別役実、清水邦夫、斎藤憐、小松幹生、永井愛、鴻上尚史、横内謙介の各氏、司会は松田正隆であった。 審査会全体の印象として、今年は例年になく激戦であり、候補作の水準も高かった。 小里清氏の『Hip Hop Typhoon −少女には死にたがるクセがある』は近未来の学校の教室を舞台にした話。単純なSF趣向の作品にならなかったことや台詞のやりとりの上手さ、そして何よりも作品の完成度の高さがほぼ全員の審査員から評価された。戦争への不安や水飢饉への恐怖を織りまぜながらも、「S」の字に並べられた教室の机をもとの位置に戻す少年たちの行動を描くというアイディアが面白かった。「14歳の心の闇にかなり迫っている。生命の躍動のような短距離走と、麻薬やイジメという負の世界が上手に対比されていて、生と死の間で危うく揺れている若い心を具体化している。非常に救いのない世界だが、妙な美しさがある」(永井)「絶望だけでなく、希望もちゃんと描いている。しかもそれが安直じゃない」(横内)という意見もあったが、「少年たちがある危険信号を発しつつあるという状況を学校の夏休みの一場面をとって作り上げた叙述的な展開としては安定して成功しているが、問題はその危険信号の内容である」と別役氏が述べ、背景にある戦争や水不足などの社会状況への接点のなさを指摘する声もあった。 佐分克敏氏の『丘の上のハムレットのバカ』は、ハムレットを上演しようとしているある劇団内部の話。初日が近づいてきたにもかかわらず、何故こんなことをやっているのか悩み出す演出家、それを慰める助手、稽古場に来なくなった役者などを通して、劇団員たちの上演までの裏話が描かれている。「別に戯曲は深刻になる必要はない訳だし、内面吐露することもない、このように演出家のプライベートの陽気な悩みっぷりを見せるのも悪くはない」(鴻上)「劇団でこんな状況になれば、もっと面白いことになる」(永井)「台詞のうまさはあるが、リアリティがなく発想が少し幼稚。それでいて文体は凝っている」(斎藤)などの意見が出た。 大岩真理氏の『ほどける双子』はベビーシッターの女性が仕事先のある夫婦のマンションの一室で、自分の作り上げた架空の人物と交信しながら、ひとり言のように会話をしてゆく。その語りを聞くうちにそれが彼女の妄想なのか現実なのかわからなくなり、彼女が本当にベビーシッターだったのかさえも疑わしくなるという、独特な世界を描いた一人芝居。「短いのに、重量感のある話。一人芝居として非常にうまい展開になっている」(清水)「現実にある母親の幼児虐待の動機を掴んでいて、説得力があった」(別役)「読めば読んでいくほど、おもしろくなっていく魅力的な作品」(小松)など、好意的な評価があがった。ただし、最後の唐突さや、何故子供を殺す必要があったのかがいまいちわからず、その説得力のなさに、不満の声もあった。だが、審査員たちに強烈な印象を与えた作品であることは確かであった。 佃典彦氏の『精肉工場のミスター・ケチャップ』は、再就職先の精肉工場に勤務するようになった男が、ある女性と出会ったことを契機にその精肉工場がボクシングジムへと転換してしまう。そこにはミスター・ケチャップというリングネームで戦うことになる自分がいる。そんな虚構と現実の二つの世界の往還を描いた作品。二つの世界が入れ替わるという飛躍を説得力を持って表現する技術的な力はあるのだが、「それが劇的にどういう効果をあげたのか理解できない」(清水)「二つの世界を主人公がいつまでも戸惑い過ぎて、その分最後の決着の仕方が安易に終った」(鴻上)という意見が出た。また、この作品は「作者がもう一度小劇場を復活させるという決意表明だ」(横内)というユニークな観点からの評価もあった。 芳崎洋子氏の『桜桃ごっこ』は性風俗店の事務所であるマンションの一室が舞台。そこで客からの依頼の電話を待っている様々な事情を抱えた女性たちの会話劇である。 構造的な複雑さや謎の仕掛け、台詞の上手さ、エピソードにリアリティがあるという評価もあったが、結末を「美しくすんなりとまとめすぎ」(永井)という意見に代表されるような終り方への批判が多くあった。「読んだ中で一番好感を持った」(横内)「この作者は今後いい作品を書くのではないかと思う」(清水)などという、これからの作者の筆力を期待する意見もあった。 田辺剛氏の『letters』は、ボランティア活動をしている若者たちの事務所であるアパートの一室が舞台。彼らは次第に活動への意欲を失ってゆく。そこにはletterが置いてあり、読む人によってその内容が違っている。現代人が抱える他者とつながる困難さを、letterという形で象徴しているが、「それが論理的に作品全体に絡み合わない」(別役)「日常の人間描写の説明を省略しすぎて、共同体の崩壊の様子がわからない」(永井)など、文体の安定性と作品の上品さは評価されたが、仕掛けとしてのletterへのアプローチ不足が指摘され強い支持は得られなかった。鴻上氏の「二十五歳という若さでこれだけ書ければすばらしい」という意見もあった。 休憩後、二度の投票を行った結果、一番多くの支持を得たのは『Hip Hop Typhoon』だった。別役氏は最後まで『ほどける双子』を「芝居を芯で動かしている力を感じる唯一の作品」と強く推したが、この作品を佳作とすることで決着がつき、受賞作は『Hip Hop Typhoon』に決定した。 私は初めてこの審査にかかわった。最終候補作のどれもが個性的で面白かった。特に受賞作には新しい劇世界が生まれる可能性を感じた。読んでいて嫉妬さえ感じた。 後援の一ツ橋綜合財団、紀伊國屋ホール、地人会の皆さん、一次二次最終と審査に携わってくださった方々に厚く御礼を申し上げます。おつかれさまでした。
選評 別役実 今回私は、大岩真理氏の『ほどける双子』を受賞作として推した。かなり短い作品で、その分だけ問題が単純化されている感は否めないが、書きたいことを体の芯でとらえて、素朴に押し出している点に好感が持てたのである。最近は、どうもからめ手から攻めて洒落た仕上げにしようとする傾向が多く、そうしたものに嫌気がさしていたせいかもしれない。 受賞作となった、小里清氏の『Hip Hop Typhoon』は、夏休みの校内の、台風襲来前の不安感というものを、叙事詩的に写し出している点には魅力があったが、全体の構造が、私には今ひとつつかみ難かった。エピソードにストーリー的な要素がなくもう少し淡々とした運びになっていれば、よかったかもしれない。情景を作りあげる才能と、それをドラマとして展開する力に、乖離があるような気がした。 全体に、技術的には向上しつつあるものの、その分力感に欠ける作品が多かったような気がする。 鴻上尚史 今年の作品は、去年より、水準が上がったような気がします。 受賞作の『Hip Hop Typhoon』は、言葉の使い方に素敵なセンスを感じました。 登場人物同士のやりとりに、言葉の運動神経を感じました。あとは、構造だけだと思います。 この言葉のセンスで、しっかりとした骨格のある戯曲を紡いで行って下さい。 『ほどける双子』は、スリリングな作品でした。 少し構造がわかりにくい所がありましたが、まあ、そんなことをぶっ飛ばして、スリリングでした。 小松幹生 小里作品の緊張感 あとで考えると、二人の中学生を取り囲むこの世界の捉え方には納得できないけれど、この二人が感じている緊迫した状況は、二人の会話の短いセンテンスの中に溢れるように満ちていて、その緊張感が鋭く迫ってくる。この感じは昨今なかなかないものだと思う。 ちょっと心配なのは、外側の世界の設定の仕方が、これは作者が「本当に感じている」ことではなくて「作った」ものではないかということだ。今回はその部分が少ないからいいけれど、これが大きくなってくると、リアリティを損なうと思う。 次に印象に残った佃作品については、ボクサーと冷凍庫の労働者の共通する部分に着目して一晩の面白い芝居を作ろうという軽やかな姿勢が、例えば小里作品のもつ真剣な姿勢の魅力を超えるには、過剰なばかりの笑いを盛りつけることしかない。「量」で「質」を超えることを、そういう作品にも期待したい。 斎藤憐 十四歳の少年による不可解な殺人事件が続いている今、小里清さんの『Hip Hop Typhoon』は、環境にいらだちながらも、社会に対してどう表出していいかわからない十四歳を描いている。少年二人と、姉妹のゆげに自殺されたらしい少女が、真夏の太陽が照りつける夏休みの学校に誰かから呼び出されたらしい。周辺には米軍基地があり、どうやら水飢饉も起こっているらしい。一見平和に満ちた麗らかな日常の中に、ドラッグに逃げ出すか屋上から飛び降りるかを迫られている十四歳を、見事に描いている。 近未来を描いた作品は、抽象的になりやすいが、校庭を走ってきた少女の濡れた肢体の具体性がそれを救っている。走る少女と、廊下を通り過ぎる制服の少女を一人の役者で演じるという仕掛けは、作劇的にもおもしろいと思った。 佃典彦さんの『精肉工場のミスター・ケチャップ』は、仕掛けとしてはおもしろいのだが、生き物を殺す職業に従事する労働者の悲哀が描かれれば、思いつきを越えられたように思う。 清水邦夫 『Hip Hop Typhoon』 この作品は、幾つかの旋律が響き合って、それが〈死〉への関心をたかめ、〈学校〉には〈死〉がとても似合うという発見につながっていき、静かにつよくこちらの内部を突き上げるものがありました。 『丘の上のハムレットのバカ』 〈虚〉と〈実〉の響き合いから一つの世界をつかみとるという試みは意欲的です。残念なところは、〈実〉の方へ少し引っぱられすぎたといった感じです。 『ほどける双子』 人間にたいする〈毒〉のある観察がユニークで、〈力〉があります。そして、いろんなものが〈はらみ〉かけている。ただ短かいだけに、きれいにおさまってしまいました。もっと不意打ちのように終わってもいいかも…。 『精肉工場のミスター・ケチャップ』 この作品の構造はスリリングだと思います。戯曲としてはやや唐突なところがありますが、実際の舞台では思いがけないものが立ち上ってくるかも。そこが判断のムズカシイところ。 『桜桃ごっこ』 女性たちの会話がしたたかでうまい。脱帽します。メタモルフォーゼ(変態すること)に作者の仕掛けがあったと思いますが、それがうまく発光しなかったのが残念です。 『letters』 ボランティアにたいする“問い”が中心になっています。これは悪くない。ただ演劇的にいえば、もうひとつ見えないところへ、観客をつれてって欲しいと思います。 永井愛 今回は以下の二作に惹かれた。 小里清氏の『Hip Hop Typhoon』は、十四歳の殺伐とした心の中心に、いきなり読者を連れ込むような魔力がある。救いのない世界だが、絶望だけに終わらないのは、疾走するスプリンターのイメージを常に平行させているからだろう。この生と死の拮抗は鮮やかだった。 最終投票では大岩真理氏の『ほどける双子』を推した。いくつか腑に落ちないところもあったのだが、ベビーシッターから吐き出される赤ん坊への呪いの言葉は、思わずよけてしまいたくなるほど、身体にぶつかってくる台詞だったからである。本音をその当事者に言わせず、当事者に扮した他人に言わせるという仕組みも卓抜だった。 この二作はラストに向かうほど世界が広がってくるという点でも、他の作品を凌いでいたように思う。始まりの面白い作品はたくさんある。終わりでしぼまないのは難しい。 横内謙介 小里さんの作品を読んだのは二作目であった。一作目は先行する作家の影響が濃過ぎると感じたが、今回の『Hip Hop Typhoon』には未知の新境地に踏み入ろうとする強い意志がある。説明を極力排してストイックに向かおうとしている割には、ドラッグや戦争など、特殊なモチーフの扱いが安直で、混乱している印象は拭えなかったが、その先にこの作家独自の世界が完成される可能性を感じた。その点で受賞に賛同した。 惜しいと思ったのは『桜桃ごっこ』の芳崎さん。この作品では素材の吟味と下ごしらえが不足していて、ドラマが核心に触れてこないもどかしさがあるけれど、台詞のセンスや全体に漂う優しさと清潔感が心地よかった。 完成度の高さでは『精肉工場のミスター・ケチャップ』が頭一つ抜けていたと私は今でも確信する。しかし佃氏はもはや中堅と呼ぶべき人だろう。そもそも近年、新人の歳が上がりすぎているのが気にかかる。次回は荒削りでいいから、もっと若く凶暴な叫びのような台詞と出会いたいと思う。 |
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